第16回ベースキャンプ・イベント「モチベーションがビジネスを変える! 〜モノが売れない時代のコミュニケーション術〜」が、ソニーグループの広告会社であるフロンテッジの主催により、2019年9月26日(木)ソニーシティ大崎にて開催されました。
モノが溢れ何でも手に入ってしまう現代において、生活者の求めるモノは最新技術や高スペックといった先進性だけを謳っているモノから、本質的な良さや自分が価値を見出せるモノへと興味や関心の対象が変わってきています。そのような「心の動き方」や「気持ちの作られ方」これこそが生活者を購買へと導く動機となっているとした考えのもと、フロンテッジでは「モチベーション」という言葉で定義しています。
登壇したフロンテッジの小里 玄さん(エグゼクティブディレクター/プランナー/フロンテッジ・モチベーション・ラボ所長)、上島 史朗さん(シニアクリエイティブディレクター/コピーライター)、稲垣 大地さん・東島 未來さん(フロンテッジ偏愛実験室 実験員/プランナー/コピーライター)の4名には、「モノが売れない」と言われる時代に、結果を出すために必要なことは何かということを切り口に、モチベーションを起点とした考え方のコツやアイデアを生み出すポイントについてお話をして頂きました。
目次
Agenda
【オープニング】
・ベースキャンプのご紹介&今回の趣旨
・映画制作の進捗ご報告「ゼロからはじめる映画制作」(笠松 愛さん)
・esportsの進捗ご報告「esportsの集い」(ソニーマーケティングジャパン 岩崎 隆さん)
【セクション1】
・「モノが売れない時代に考える、ココロを動かし、ヒトを動かす思考術」(フロンテッジ 小里 玄さん)
【セクション2】
・「モチベーション起点のクリエイティブ
Think Small. 〜気がつけば、僕らは小さいほうの味方ばかりしていた。〜」
(フロンテッジ 上島 史朗さん)
【セクション3】
・「ソニーの”偏愛”をハックする」(フロンテッジ 稲垣 大地さん・東島 未来さん)
【チャレンジセクション】
・「お酒が好きな人も嫌いな人も、気軽につながれる世界を造りたい」(キリンホール 原田 堅伍さん)
【セクション1】
モノが売れない時代に考える、ココロを動かし、人を動かす思考術
小里 玄
エグゼクティブ・ディレクター/プランナー
フロンテッジ・モチベーション・ラボ所長
ソニーをはじめ、金融、不動産から飲料チェーン、アパレル、スポーツブランドまで幅広いフィールドで、
ブランディングを起点とした幅広いソリューションにより、ビジネスサポートに貢献。
従来のアプローチをしていても今の生活者たちには届かない。
デジタルの普及によって情報が溢れかえった現代において、生活者たちは外からの情報にはバリアを貼り、自らの欲求に合ったことだけを受発信するようになっている。
いま必要なのは「モノの情報を伝える」ことではなく「ターゲットにとっての価値を伝える(=モチベーションを生む)」ことであり、企業の課題に対して、「ターゲット(誰を)」と「目的(どう動かすか)」を適切に設定することこそが大切。
そして、ターゲットには商品やサービスに対して関心層と無関心層が存在しており、この両者にとっての価値もまた異なるものであることをしっかり理解しなければ、優れた施策や貴重な投資をおこなっても効果を出すことには繋がらないと説明。
関心層:商品やサービスの機能や効果を重視する=モノ軸が効く層。
無関心層:商品やサービスの自分にとっての価値を重視する=コト軸が効く層。
モノ軸とコト軸の違いを正しく理解した上で、ターゲットに対して適切な価値を設定し、それを伝えてあげることこそが重要であり、数々のクライアントの企業課題を解決してきたメソッド、そこには生活者のモチベーションの観点から解決策を導き出す思考術がありました。
【セクション2】
モチベーション起点のクリエイティブ
Think Small. 〜気がつけば、僕らは小さいほうの味方ばかりしていた。〜
上島 史朗
シニアクリエイティブ・ディレクター/コピーライター
フロンテッジ・モチベーション・ラボメンバー
WEB、動画、デジタルプロモーション、リアルエクスペリエンスなど、
ジャンルの垣根なく数多くの広告のクリエイティブを担当。
最近では、キリン#カンパイ展をはじめ、西武・そごう「わたしは、私」、信濃毎日新聞、日清シスコ、
レコチョクなどを手掛ける。過去には、nav-uのブランディング、VAIOの独立をサポート。
最近は、aiboのコミュニケーションやSNSを使った横断型カテゴリーのコミュニケーションを担当。
昨年11月の第8回ベースキャンプにも登壇しており、
その際は「若者の〇〇離れ」とどう向き合うかというテーマで話をして頂きました。
今回は、企業の課題に対しての解決策には決まった形はなく、様々なアプローチのやり方があるということを、実際に担当された6社の事例を交えてご紹介頂きました。
日本国内での知名度の低さから、
リクルーティング状況が芳しくない外資の自動車機器サプライヤーBOSCHの事例では、
リクルーティングの本当の課題は知名度ではなく、そこで働く社員が、自分の会社に誇りを持てるかどうかなのではないかと仮説を立て、
社員が人を呼びたくなるようなカフェを本社1階につくりました。
そのカフェには、SNSで共有したくなるような様々なこだわりを詰め込んだ空間と体験をデザインし、企業の本社がある母国ドイツ由来の食事や、企業の歴史を物語るアイテムで構成。そのカフェは話題となりメディア取材数が300件を超え、インスタグラム投稿数も1500件以上を記録、ターゲットであるリクルート対象者(20〜30代の生活者)が生活動線上で共感できるメディアにも多数取り上げられたことで、「勤務先としての企業の魅力度」に関する世界最大規模の調査「ランスタッドアワード」で海外企業部門第1位を獲得し、リクルーティングにも大きな効果をもたらしました。
企業の課題に対する解決策、そのアウトプットはTVやポスターなどだけではなく、
今回のBOSCHの事例のようにカフェをつくり誇りをデザインすることで、見事解決へと導くことが出来たのです。
【セクション3】
ソニーの“偏愛”をハックする
稲垣 大地、東島 未來
フロンテッジ 偏愛実験室 実験員/コピーライター
稲垣 大地
デザインプロダクションのコピーライターとしてキャリアをスタートし、
就職事業会社、広告代理店の戦略プランナーを経て、現職へ。
東島 未來
グラフィック広告制作会社のコピーライターとしてキャリアをスタート。
カタログ・チラシやマス広告の制作を経験した後、現職へ。
このセクションの前半では、
昨今、話題になっているリカーリングやサブスクリプションに焦点をあて、
どうしてもビジネスモデルやマネタイズの仕組みに注目が集まりがちだが、
肝心の顧客心理に対する言及が、あまり成されていない事に着目。
リカーリングという仕組みだけでは人は動かないとし、偏愛こそが燃料となり、
人の行動を喚起させることを説明しました。
偏愛=ファンの心模様、熱狂
このように偏愛を定義し、ファンの心理は、それを愛せずにはいられないという何かしらの原理で動いている。“人は、いかにファンとなり、いかにファンとして居続けるのか”
この動力となる偏愛を解き明かすことで、ビジネスをもっと好循環させられるのではないかという仮説のもと、5つの偏愛のツボについてご紹介いただきました。
後半では、偏愛実験員の東島さん自信の絵本が好きということを例にあげ、
なぜ絵本に偏愛しているのかという点を、自身の実話や体験談を交えて話して頂きました。